全国発酵食品サミット小泉幸道先生「お酢講座」を聴講して
2024年10月27日香取市で行われました全国発酵食品サミットにて、お酢博士小泉幸道先生のお酢講座が開かれました。
講座では、普段手にしているお酢が生活にどう関わっているのかを分かりやすくお話してくれました。
講義の一部を抜粋し、まとめお伝えしたいと思います。
<発酵とは>
微生物により有機化合物(主に食品)が酵素反応によって、人に有益なものを生ずる作用のこと。逆(益をもたらさない)を腐敗という。
<発酵食品の特色>
- 独特の風味:食品素材に無かった味や香りが生まれる
- 滋養の宝庫:発酵過程において、素材に無かった様々な栄養成分を生産し蓄積する
- 食品素材を蓄える:発酵することで長期保存が可能となる
<お酢の酸味の役割>
味覚には食べて良い物かどうかを見極める門番の役割も担っている。そのなかで酸味は「代謝を促進する有機酸シグナルと腐敗による酸のシグナル」の役目と「緊張やストレスを緩和する」役目を担っている。
<日本における酢の漢字と歴史>
酢という漢字の中にある「酉(とり)」は熟成を意味し、酒の一種と考えられていた。
日本において酢は中国より酒の醸造技術と相前後して入っており、江戸時代初期に粕酢が商品として作られるようになった。
<酢の科学>
抗菌作用
酢はpH2.5~3.5という強い酸性を示す食品である。自然界に生存する多くの微生物は最適pH5.0~9.0のため、その増殖を抑制することができる。
使用例
酢じめ酢の持つ殺菌能力とpHを下げることで酵素作用を止め、自己消化による腐敗を防ぐことが目的。
酢洗い魚の臭み成分であるアミン類を反応させて臭みを消すことと、表面についた細菌の増殖を抑制することが目的。
酢漬け酢の殺菌作用を利用して、食品を長期保存できるようにしたもの。
病原菌に対する調味料の殺菌効果(チフス菌、疫痢(赤痢の重症型)、赤痢菌、大腸菌)
- 牛乳:全て2週間前後生存
- 醤油:全て5時間生存、24時間後に死滅
- ソース:全て2~5時間後に死滅
- 日本酒:全て1時間後に死滅(アルコールが作用)
- 食酢:全て10~30分後に死滅
体調の調節
消化液の分泌促進効果唾液や胃液の分泌を促進し、食物の消化吸収をよくすると考えられている。腸のぜん動運動を促し、便通を正常化する。
ただし、便秘は原因を探ることが大事だと先生はおっしゃっておりました。効能だけでは健康は生まれないということかもしれません。
疲労回復のお手伝い肝臓や筋肉に多く含まれているグリコーゲン(疲労回復や血糖値維持などエネルギー源となるもの)の再補充促進効果がある。糖と酢酸を同時に摂取すると消耗された肝臓グリコーゲンの再補充(回復)が促進される。糖単体に比べて3.5倍も早い回復。
食欲増進効果食欲は生理的欲求であるが、ストレスや睡眠不足、気温などで食欲が失われることがあるため、食酢の酸味と香りが味覚や嗅覚を刺激して、脳の接触中枢に働きかけて、唾液を分泌し食欲をよみがえらせる。
また、加齢により食べ物が飲み込みにくくなったときに酢のもの最初に食べることにより、唾液が分泌され、食べ物がのどを通りやすくなる。
夏バテ解消効果夏は冷たい物や糖質の摂りすぎにより胃の働きが衰えがちになり、夏バテとなり慢性疲労の状態になる。さらに暑さでビタミン類の消費が激しくなり、さらに汗と共にミネラル類も消耗する。
そこで、お酢を摂取することで、食欲増進、消化液分泌促進により胃が元気になり、さらにミネラルの吸収も良くなる。
血圧降下効果まず、生活習慣により後天的に血圧が高めの人は、生活習慣の改善が必須である。それ以外に、食酢には血圧上昇にかかわるホルモン調節機構(レニン・アンジオテンシン系)を穏やかに抑制する。
大さじ1/一日を続けると一か月半で効果が表れ始め、大さじ2/一日だとさらに早く効果が出ることが研究により明らかになっている。4~5倍に希釈し飲用とする。
栄養補給効果酢の有機酸とミネラル類が合わさることで、栄養補給効果が期待される。
カルシウム補給お酢には素材に含まれるカルシウムを引き出すチカラがあり、腸からの吸収を高める作用もある。(貝殻など食べられないカルシウム素材は、酢と煮出すと溶出効果が高まる)
内臓脂肪が有意に低下大さじ1/一日を12週間摂取し続けると内臓脂肪が低下した。
<お酢に寄せられる質問を抜粋>
Q:お酢の摂りすぎは良くない?
A:身体が欲して体調が良いなら問題ない
Q:酢はからだを冷やす?
A:身体を冷やすということは全くない。
<終わりに>
酢は様々な食物とよく調和するので、味わいを良くする。また生鮮食品を素材とする料理と相性が良いので、過剰な加工食品の摂取を抑えることにもなる。生活を豊かにする調味料として、活用することが望まれる。
以上です。
先生のお人柄がにじみ出る、優しい語り口でございました。
なお、酢之宮のホームページではお酢について、私たちの口から学識的な見地をお伝えしないようにしております。私たちがその立場にないことはもちろんですが、柿に含まれている成分を集めても、柿を作ることができないように、人間が及ばないチカラが自然にはあると思うからです。
小泉幸道先生の終わりにありましたように、「お酢は生活を豊かにする調味料」だということを、お酢に魅せられ、研究を重ねてこられた先人のみなさまのおかげで、様々な形で表現されていることは感謝しかございません。